後藤健生の「蹴球放浪記」第145回「世界遺産オウロ・プレットで舞台に立つ」の巻(1)メキシコで歩んだ「コルテスの来た道」の画像
2013年コンフェデレーションズ・カップ開幕戦の入場券 提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生にとって、ワールドカップに欠かせないものがある。残念ながらカタールにはなかったが、ブラジルや南アフリカではしっかりと堪能できた。「観光」という名のフィールドワークだ。

■メキシコW杯の思い出

 2022年のワールドカップはカタールという小国での開催でした。しかも、あまり見るべき観光地もない国ですから、僕は地下鉄で宿舎とスタジアムを往復するだけの日々を過ごしました。そのかわり、ワールドカップを毎日2試合ずつ観戦するという夢のような生活ができたのですが……。

 しかし、普通のワールドカップでは開催都市以外の観光地を訪れる「サイドトリップ」も楽しみの一つです。第一、ブラジルのナタルとかクイアバ、ロシアのサランスク、ロストフ・ナ・ドヌーといった地方都市は、ワールドカップで、しかも日本代表の試合が行われなければ訪れることは一生なかったのではないでしょうか。

 そして、観光を目的に開催都市以外を訪れるのも楽しい経験です。

 1986年のメキシコ・ワールドカップの時は、スペインの征服者エルナン・コルテスが上陸したカリブ海岸の港町、ベラクルスまでバスで往復しました。「コルテスの来た道」と自分の中で名付けたイベントでした。

 古い港町や砦も興味深かったのですが、今でも記憶に残っているのは山脈を越え、砂漠を越えるベラクルスまでの絶景の数々です。砂漠地帯では奇妙な形をしたサボテン類をいくつも見ることができましたし、巨大な塩湖の中の平坦で直線的な道路も日本では絶対に経験できない光景でした。

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