好ゲームに釣り合わなかった大会運営の配慮【皇后杯準々決勝から見える日本女子サッカーの現在地】(3)の画像
ファンも女子サッカーを盛り上げる必要性を感じている 撮影/渡辺浩樹(Sony α1使用)

 1月15日に、皇后杯の準々決勝が行われた。ベスト4入りを懸けた戦いは、見応えがある一方で問題点もうかがえた。サッカージャーナリスト・後藤健生が、現在の日本女子サッカーの魅力と問題点について考察する。

■「入場無料」は正しいのか?

 カンセキスタジアムとちぎでの2試合は、いずれも内容のある好ゲームだった。しかし観客数は1試合目が664人、2試合目が799人に終わった。「冷たい雨の中」という悪条件があったとしても、あまりに寂しい数字だ。そして、これが日本の女子サッカーの現状なのだ。

 ヨーロッパでは、女子の試合に数万人の観衆が集まることも珍しくなくなったというのに、WEリーグが発足しても日本の女子サッカー人気は一向に上昇する気配がない。

 もちろん、観客動員のための工夫をしていないわけではない。たとえば、皇后杯は準々決勝までの試合は入場無料となっている。

 1人でも多くの人に女子サッカーを見てもらいたいという気持ちなのは分かる。だが、「入場無料」というのは人気拡大のための正しい方法なのだろうか?

 WEリーグが発足したことによって、日本の女子サッカーはプロ・スポーツとなったのだ。もともと、日本のスポーツ界に「女子のプロ・リーグ」という道を作っていこうという高い理想を掲げたリーグだったはずだ。そして、実際、皇后杯準々決勝に勝ち残った4チームはいずれもWEリーグのクラブだった。

 そのプロの試合を無料で開放するというのは正しいやり方なのだろうか?

「無料」ということは、つまり、意地の悪い言い方をすれば「私たちの競技はお金を払って観戦する価値がないものですよ」と言っているのと同じこととも言える。

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