■力はあった欧州勢

 多くの波乱が起こったもう一つの原因は、ヨーロッパ諸国の不振だった。

 ヨーロッパで好調だったのは、イングランドとフランス、それにクロアチアだけだった。

 イングランドは、デクラン・ライス、ジュード・ベリンガム、ジョーダン・ヘンダーソン(またはメイソン・マウント)が構成する中盤の完成度が非常に高く、近代的な戦術を駆使したサッカーをしていた。そして、前線でもブカヨ・サカ、ラヒーム・スターリングフィル・フォーデンなど魅力的な選手を両サイドに配し、センターのハリー・ケインはフランス戦のPK失敗で評価を落としたが、ターゲットとして素晴らしいプレーを見せてチームの躍進に貢献した。

 また、決勝に進出してアルゼンチンとの死闘を演じたフランスは開幕から好調を維持。大会連覇にあと一歩と迫る活躍を見せた。

 大会前にカリム・ベンゼマやボール・ポグバなどが負傷で戦線を離脱した時には不安を抱かせ、さらにオーストラリアとの開幕戦ではリュカ・エルナンデスが重傷を負う中で、代役で入ったオールレアン・チュアメニなどが活躍。アントワーヌ・グリーズマンが攻守に貢献し、オリビエ・ジル―の決定力も衰えていなかった。

 そして、そこに23歳の若さで2度目のワールドカップとなったキリアン・ムバッペの類稀なる決定力が加わったのだ。その層の厚さはまさに驚異的と言える。

 アルゼンチンは、もしメッシが不在だったら優勝にはまったく手が届かなかっただろうが、フランスはもしムバッペが不在だったとしても、十分に優勝を狙える力があった。

(3)へ続く
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