■「良いサッカー」とは何か
大会中、スペインのルイス・エンリケ監督が「スペインが良いサッカーをしている」というコメントを発していたようだが、「パスをつなぐ技術」という意味ではたしかにスペインは出場32チームの中でも最も上手かったのかもしれない。
だが、サッカーの目的はパスをつなぐことではない。真の目的は、相手より1点でも多くのゴールを奪って(あるいは、失点を相手より1点でも少なくして)勝利することなのである。その意味では、スペインはけっして「良いサッカー」をしていたわけではない。
ちょっと待って。今の言葉、プレーバック、プレーバック……。
「パスをつなぐのはうまいけれど、それがゴールにつながらない」。なんか、懐かしい言葉だと思わないだろうか? そう、日本代表は、かつてずっとそんな風に揶揄され続けてきた。ブラジルと対戦すると、日本はボールを持たされて、パスカットを狙われてカウンターから失点を重ねる、そんな試合ばかりだった。
ところがどうだ、今大会の日本代表は!
ドイツやスペインは個人能力では日本を間違いなく上回っていた。日本の選手がプレスをかけにいっても、かわされてしまうことが多かった。とくに、やはりスペインのパスをつなぐ能力は、日本代表よりはるかに上だった。
だが、日本はスペインの攻撃に耐えて(あるいは、スペインの得点力不足に助けられて)前半を1失点で折り返すと、後半に入って一気に攻撃のギアを上げて、あっと言う間に2ゴールを決めたのだ。「パスはうまいけど……」と言われていた時代の日本からは想像もできないような決定力だった。
この効率の良さを維持したまま、パスをつなぐ能力でもスペインに近づけたとしたら、その時は日本代表はベスト8に相応しい(そして、一つ二つの幸運があれば決勝進出も狙える)チームになるのだろう。