カタール・ワールドカップが始まって、1週間ほどが経つ。優勝候補と言われた国でも、苦戦を強いられている。そのひとつが、アルゼンチン代表だ。初戦でまさかの黒星を喫したが、第2戦で勝利。優勝の可能性を、サッカージャーナリスト・後藤健生が考察する。
■潮流に流されない「時代遅れ」
終了間際の87分のアルゼンチンの2点目も、メッシのアイディアから生まれたものだ。
CKの場面でロドリゴ・デパウルからショートCKのボールを受けたメッシ。時間が時間だけに、ここはボールをキープして時計の針を進めるのかと思ったら、上がってきたMFのエンソ・フェルナンデスに優しいパスを送ったのだ。メキシコのDFは意表を突かれてフェルナンデスはフリーとなってコースを狙ったシュートを決めた。
まさに、メッシの技術とアイディアから生まれた1得点1アシストだった。
あのテンポの遅いアルゼンチンの中盤は、ある意味で“時代遅れ”と言ってもいいものだ。
僕の隣で試合を見ていた若手の(?)ある日本人記者が「1980年代の試合の映像みたいに見えた」と語っていたが、当たらずと言えども遠からずである。
最近、FIFAのテクニカル・チームがカタール大会では「カウンタープレス」が有効だとの見解を発表した。だが、アルゼンチンの中盤での守備は、その「カウンタープレス」の餌食になりかねないものなのだ。
しかし、「近代的ではない」という理由でアルゼンチンのサッカーを否定すべきものだとも思えない。なにしろ、アルゼンチンはそういうサッカーで勝ってきているのだ(今大会でヨーロッパの強豪と対戦したときに、どのような結果になるかも見てみたい。いや、日本代表もアルゼンチンと対戦して、あのアルゼンチンにプレッシングをかける姿も見てみたいものだが)。
もしかしたら、アルゼンチンはヨーロッパの強豪の「カウンタープレス」の前に完全に崩れ去ってしまうかもしれない。
だが、逆にこの日のメキシコ戦のようにヨーロッパ勢のプレッシングを「球際」の強さでしのぎながら、耐えて最後にメッシの一撃で勝利してしまう可能性もあるのだ。