■イングランドの変化

 最近の(ここ20年ほどの)イングランドは、さすがに大昔のロングボールを使ったイングランド・スタイルとはとっくに決別していたものの、戦術的にはかなり大雑把なチームが多かった。だが、今大会のイングランドは、パスが通るとそれぞれの選手がきちんとポジションを変えて、3人目、4人目が次のパスを受けに走るから、ワンタッチのパスが素早く何本もつながっていく。

 2戦目では、若くて元気なアメリカの攻撃に押し込まれる時間も長かった(アメリカもこれまでの“真面目一辺倒”のサッカーではなく、非常にアイディア豊かなチームになっている)。だが、この試合、イングランドは開始直後からかなり慎重に戦っていた。最後まで無理はせずに勝点1を確保した。そんな印象だった。

 これも、従来のイングランドと違うところだ。

 イングランドの選手は、昔ながらのフットボーラーの気質を引き継いでいるのか、勢いでプレーするようなところがあった。それもフットボールの楽しみの一つなのだが、ついつい深追いしてカウンターでやられてしまう場面も何度も見てきた。

 だが、アメリカ戦を見ていると、“無理すべきところ”と“無理すべきではないところ”をきっちりと使い分けて意識の統一もできていた。だから、引き分けに終わりはしたものの、僕のイングランドへの評価はポジティブなままだった。

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