■W杯までに必要な準備
こうして、池田太監督が挑戦したスリーバックは十分に期待できるオプションになりそうだ。だが、FIFAランキング46位のナイジェリア、同22位のニュージーランドとでは実力の差が大きかった。日本は間違いなくポゼッションで上回ることができる試合だったので、ウィングバックも後顧の憂いなく攻め上がることもできた。
しかし、強豪相手にもこの新システムが機能するかといえば、それはまた別問題だ。これから習熟度を上げて本大会でも3-4-3で戦うには、強豪相手にテストを繰り返す必要があるだろう。スリーバックを完成させるためには、やはり一定の時間が必要となる。
ワールドカップ本大会まで2年あるというのなら、これからチャレンジを続けていけばよい。だが、女子ワールドカップは2023年の7月20日に開幕する。9か月しか時間がないのだ。
10月シリーズでは、これまで女子日本代表の攻撃の主役だった岩渕真奈と長谷川唯が、コンディション面などを考慮して招集されていない。一方で、U-20日本代表で活躍した浜野まいか(同ワールドカップ最優秀選手賞受賞)、藤野、小山という3人の新戦力が初めてフル代表に招集された。そして、浜野と藤野はナイジェリア戦では69分に交代出場、藤野はニュージーランド戦でフル出場。小山もデビューしてそれなりのプレーをした。
彼女たちは、いわゆる「旬の選手」であり、こういう時期にフル代表を経験させておくことには大きな意義がある。来年のワールドカップに間に合えば良いし、そうでなくても、将来の日本代表の中核を任せられる選手たちであることは間違いない。
新戦力を融合させてチーム内競争を高めることも、新システムを試みることも、チームに刺激を与えてマンネリを防ぐ効果もある。だが、一方で、ワールドカップ本大会までの時間的制約を考えると、そろそろ本大会に向けてメンバーを固めていく時期でもあるのだ。本大会に向けて選手もそろそろ絞り込んでいかなければならない。
そうした時間的制約を考えると、新戦力の融合も新システムの習熟もなかなか難しいタスクとなるはず。池田監督にはそのへんのバランスを考えながら強化を進めていってほしいものである。