大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第99回「GKが止めるのか、グローブが止めるのか」(2)「ウナギつかみ」が与えてくれたヒントの画像
確かにGKヨングブロートは素手でプレーしている。しかも、背番号は「8」 写真:Interfoto/アフロ

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回は、「天狗のうちわ?」

■GKグローブの進化の始まり

 さて、1974年ワールドカップにおけるマイヤーの活躍で、「ロイシュ」のGKグローブは大いに知られるところとなり、当然、大ヒット商品となった。そして後に世界の「GKグローブ市場」を二分することになる同じドイツの「ウールシュポルツ」など、他の用具会社が次々と類似の新製品を世に出すようになる。

 マイヤーのグローブで最も重要なポイントは、手のひらと指の「腹」の部分に使われるフォーム状の天然ゴムだった。この素材には軽い粘着力があり、ボールがきれいなら、つかんだ後にこぼれることはない。極端な話、ボールをこの合成樹脂の面につけ、指を開いてボールを下にしても、ボールは落ちないという代物なのである。

 だがこうした「高性能」であるが故に、土やほこり、あるいは汚れによって、その粘着力は極端に低下してしまう。しかも非常に軟らかいので、使っているとすぐにぼろぼろになってしまう。そのため、プロでは、GKたちは通常毎試合新しいグローブを使う。ほこりなどが着かないよう、未使用の時点では天然ゴムの部分には薄いビニールが貼ってあるのだが、そのビニールを丁寧にはがし取り、そして着用するというのが、GKの試合前の「儀式」となるのである。手のひらの合成樹脂が間もなく白いものになったのは、土やほこりがついていないか、すぐにわかるようにしたものだ。

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