■見たことのないコーヒー
中東の古い家は一見の価値があります。とくに、煙突のような塔から、風を取り入れる冷房装置はよくできていて、ひんやりとした風に当たることができます。
エアコンがきいた大広間の絨毯の上に参加者全員が車座になって現地のスイーツをご馳走になりました。そして、出てきたのが緑色の飲み物でした。
「コーヒー(アラビア語でカフワ)です」と言われましたが、どう見ても日本の緑茶のようにしか見えません。
「えっ、お茶でしょ?」と尋ね返しましたが、「いえ、コーヒーです」というのです。
半信半疑で一口飲んでみると、不思議なことに確かにうっすらとコーヒーの香りがするのです。
どうやら、コーヒー豆を焙煎せずに、生のままの豆を使って煎れた飲み物のようです。
コーヒーというのはアフリカ大陸のエチオピアが原産地でしたから、ヨーロッパ人に知られるようになる前に、古くから中東では飲まれていました(厳格なイスラム主義ではアルコールと同じようにコーヒーも禁止することもあったようですが)。豆を焙煎するというのも中東での発明で、普通、アラビア式コーヒーというとドロッとした真っ黒な飲み物なのですが、どうやら「北の岬」でご馳走になったのは生の豆で煎れたコーヒーだったようです。
30年も前の出来事ですが、カタールでの思い出というと「北の岬」でのグリーンのコーヒーのことが真っ先に頭に浮かんできます。