■「こういうゲームが多くなるとは思う」
「10人だったにせよ、こういうスタイルだし、まだ1試合しかやってないですけど、こういうゲームが多くなるとは思う。それは別にこのチームじゃなくても、例えば他の色んなチームに行ったとしても。そういう(ロングボールに競り勝っていく)ことはワントップだったらどこに行っても求められると思うんで。別にそれはネガティブなことじゃなくて。僕はどっちかといえば駆け引きとか、ゴール前のところでっていうのが武器ではあるんですけど、そこも身に着けるためには良い環境なのかなと思います」
上田が言うように、まだたった1試合が終わっただけだ。しかし退場者が出るまでの30分間も、押し込まれるシーンが散見された。セルクルにとっても新加入の上田にとっても、なかなか難しいシーズンになることが予想される。
また一般的に、ワールドカップが行われるシーズンでの海外移籍には賛否両論ある。チーム内での立ち位置やプレースタイルだけでなく、私生活でも住居から言語、文化、食事、習慣など、環境が文字通り一変することがリスクになる、ということが否定派の意見だ。しかし上田は、このタイミングでの移籍を選んだ。そこに何のリスクがあるのか理解できない、と彼は主張する。
「僕はリスクを感じてないです。逆に、鹿島で出続けることがワールドカップに近いと思いますか?実際今、前期に10点取って、代表でじゃあ一番手で使ってもらえますか?って、ちょっと考えれば、僕はもう一目瞭然だと思うし。問答無用で。仮に、じゃあ鹿島に残ってあと10点取ったとして、シーズン終わって20点でも、本当にワールドカップで(試合に)出られるんですか?こっちに移籍して、例えば前期に5点取る方が、もしかしたら評価に値するかもしれない。その…よく聞かれるんですけど、僕はそこをリスクだという感覚が全く分からないです。だって現に今、代表で出てないんで、僕。リスクだと思いますか?」
狭い通路での簡易なミックスゾーン。両クラブの選手やスタッフが大勢行き交う中、上田はそう“逆質問”を投げかけてきた。こちらが「もちろん鹿島でもポジション争いがあるのは大前提。でも、おそらく鹿島なら試合に出られる公算は大きい。しかし移籍先ではそれらが未知数で、全く試合に出られなくなる可能性もある。それがリスクという風に考えられる」と返す。すると上田は「言ってることは分かりますよ」と前置きしながら、さらに熱弁を振るってくれた。