大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第93回「リーグ・システムはサッカーの基本」(3)イングランドでサッカー発展に貢献したアメリカの国技の画像
豊かな歴史があってこそ、現在のサッカーがある

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーで最も重要なもののひとつ。

■海の向こうの先駆者

 さて1888年のはじめ、マグレガーは相次ぐ試合キャンセルをどうすればなくせるか、必死に考えていた。サッカーよりずっと歴史が古いクリケットでは、それぞれのクラブが連絡を取り合って試合を組み、ひとつのシーズンでは負けが少ないチームを「チャンピオン」と呼ぶ習慣があった。マグレガーは、このシステムからヒントを得て定まったクラブだけグループをつくれば、日程が安定するのではないかと考えた。だがその脳裏には、十数年前に取り組んでいた野球の普及活動もあったに違いない。普及活動の当面の目標は、英国内に「野球のリーグをつくる」ことだったのだ。

 定められた数のチームがホームとアウェーで定期的に対戦するシステムは、アメリカで発明されたものだった。アメリカでは、1871年に「ナショナル・アソシエーション・オブ・プロフェッショナル・ベースボール・プレーヤーズ」という組織がつくられ、10クラブが参加、試合数は同じではなかったが、プロチーム同士が定期的に試合をする環境がつくられていた。1876年には「ナショナル・リーグ」がつくられ、それが今日まで続いている。システムとしては1871年に、そして「リーグ」という名称は1876年に初めて使われ、ナショナル・リーグは見事に成功してすでに12年を経過していたのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3