日本代表はワールドカップに向けての準備として、9月にアメリカ代表と対戦する。スポーツ大国アメリカは、サッカーにおいても世界的な強国である。日本代表にとって素晴らしいテストマッチの相手となるアメリカを、サッカージャーナリスト・大住良之が掘り下げる。
■ペレを招いたプロリーグ
大きな転機となるのは、皮肉なことにアメリカが4大会連続で出場権を失った1966年のワールドカップだった。この大会は初めてテレビの国際放送が行われ、アメリカ人にダイレクトにサッカーのおもしろさを伝えた。その翌年、新たなプロリーグである「北米サッカーリーグ(NASL)」が誕生するのは、まさにワールドカップの影響だった。
NASLは参加チームの大半が欧州や南米から選手をかき集めてつくられた。アメリカあるいはカナダ国籍の選手は、平均すると1チームに2人程度だった。1975年、ニューヨーク・コスモスがブラジルの至宝ペレと契約、NASLは一挙に世界の注目を集めることになる。そしてその後は、フランツ・ベッケンバウアー、ジョージ・ベスト、ゲルト・ミュラー、ヨハン・クライフと、世界のトップクラスの選手がやってきて毎試合何万人もの観客を集めるようになる。
NASLは、当然のことながら、アメリカ代表の強化に役立つこともなく、1984年をもって歴史の幕を閉じる。だが後のアメリカサッカー大発展の最大の要素となるタネは、まさにこの時代にまかれたものだった。アメリカ中の子どもたちの間で、サッカーが人気ナンバーワンのスポーツとなったのだ。