サッカーにも、機械化の波が押し寄せている。今年開催されるワールドカップにも、あらたな変化がもたらされる。サッカーはテクノロジーといかに付き合っていくべきなのか、サッカージャーナリスト・大住良之が検証する。
■もたらされる多くの変化
「プレーの瞬間」の判断とともに、「そのときオフサイドポジションにいたかどうか」は、AIによってほぼ瞬時に判断される。VAR担当の審判員たちは、AIによってオフサイドポジションにいたと確認された選手がプレーにかかわったかどうかを判断し、その結果をピッチ上の主審に伝える。これまで長いときには4分間かかっていたVARによるオフサイドの判定は、3~4秒(!)に短縮されるという。
さらに、AIはただちにそのシーンの「3D・CG(立体的なアニメーション)」もつくり、3Dのオフサイドラインも引く。その映像は25秒以内にテレビ放送や場内スクリーン用に提供されるという。サッカー判定に科学技術の助けを入れたのは2012年のゴールラインテクノロジー(GET)だったが、このシステムでは、ゴールラインを割ったかどうかのCGがつくられ、最終的にゴールラインを超えていたかどうかが明確に示される。オフサイドのCGも、それと同じような説得力をもつはずだ。
システムは1試合を通じてオフサイドの監視をしているが、上記のプロセスはVARが発動するときだけに表に出る。GKのキックをオフサイドポジションから戻りながら触れ、味方にバックパスし、そのボールが直接最前線に戻されるのではなく、横パスや再度のバックパスにつながった場合などでは、副審は「オフサイドディレイ」をせずに旗を上げるだろう。その判定についての成否に、半自動オフサイド・システムは関与しないはずだ。