■ドイツでさらに経験を得れば…

伊藤洋輝 撮影:中地拓也

 パラグアイ戦で直接失点に関与、チュニジア戦でもPKのシーンは伊藤のクリアミスからだった。まだ経験不足は否めないが、それを差し引いても今シリーズでは合格点だったのではないか。左利き、188cmという長身、スピードもありCBやSB、さらにはボランチと複数ポジションをこなせる。冨安健洋もそうだが、サイズとスピードのあるDFは重宝される。それに加え複数ポジションもこなすことができれば、これほど良いことはない。

 伊藤は現在、ドイツ1部のシュトゥットガルトに所属。ジュビロ磐田の下部組織から2017年にトップチーム昇格。2019年には名古屋グランパスにレンタル移籍。2021年6月にはシュトゥットガルトへのレンタル移籍が決定。当初はBチームでの出場予定だったが、欧州1年目からレギュラーとして活躍。今季はリーグ戦29試合に出場1ゴール1アシストを記録し、チームの1部残留に貢献した。さらに2022年5月20日にシュトゥットガルトへの完全移籍も決まった。

 このままドイツで経験を積み続けることができれば、A代表左SBの適任者となれるだろう。オーバーラップのタイミングや、正確なクロスなど攻撃面での貢献度も高いが、まだ連係面でもやや物足りなさもある。だが、W杯まで約5か月。短い時間で代表として活動できる時間も限られてくる。所属クラブで自身のレベルを上げていくしかない。今できることをして、W杯のメンバーに入ってくるような存在になってほしいところだ。

 伊藤が代表のスタメンで出られるようになれば、伊藤を左SBに起用することだけでなく、彼をCBに置き、冨安を右SBに置くことも考えられる。さらにはオプションとして3バックも可能だ。チュニジア戦の82分、2点ビハインドの状況で森保監督が最後のカードとして切ったのが山根だった。山根をウィングバックに上げ、伊藤を左CBにし3バックにしても良かったのかもしれない。なんとしてでも1点が欲しい状況でフォーメーションを変えて打開していく考えも必要だったのかもしれない。伊藤が加わることで、そうしたフォーメーションチェンジも行うことができる。

 様々なことを考慮し、総合的に判断しても伊藤は日本代表左SB長友佑都の後継者として相応しいだろう。今後の成長に期待したい。

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