■形あるものはいつか滅びる
2002年大会は、日本サッカー協会に思いがけないものをもたらした。円安の影響もあって日本組織委員会は130億円という思いがけない額の黒字を計上し、日本協会にも約30億円の分配金が渡されたのだ。日本協会は、ワールドカップが赤字になったときのためにと用意していた積立金と合わせて、東京・文京区にビルを購入、「JFAハウス」と名づけ、そこに日本初の「サッカーミュージアム」も設けた。ここにはJリーグもはいり、やがて東京都サッカー協会などもはいって文字どおり日本のサッカーの中心となった。
しかし2020年に千葉県千葉市美浜区に「高円宮記念JFA夢フィールド」が完成して技術関係や審判関係が移り、何よりも2020年来のコロナ禍によって協会職員の勤務スタイルが代わって「テレワーク」が増えたことなどから、JFAハウスは売却され、2023年には都内の貸しビルあるいは貸しオフィスに移ることが決まっている。都心部の地上11階、地下3階という「城」は、いわば「ワールドカップ2002のレガシー」の象徴のようなものだったが、スタジアムと同様、形あるものはいつか滅びるのだ。