■ついに欧州「ビッグ5」でデビュー
だがトップクラスのプロの男性の試合を主審として女性がコントロールするまでには、もう少し時間が必要だった。欧州のプロ1部リーグで最初に女性主審が登場したのは1999年のこと。スイスリーグの舞台に立ったニコーレ・ペティニャ主審は、翌年には隣国オーストアの1部リーグでも主審として活動した。
その後はなかなか続かなかった。ギリシャ(2010年)、ルクセンブルク(2013年)、アイルランド(2015年)、ウクライナ(2016年)と「さみだれ式」に続いたが、主要国のプロトップリーグ、いわゆる「ビッグ5」のリーグではなかなか実現しなかった。
「ビッグ5」で最初に女性主審が登場したのはドイツのブンデスリーガ。2007年にブンデスリーガ2部の主審となったビビアナ・シュタインハウスが、10年後の2017年にようやくブンデスリーガ1部の舞台に立ったのである。
シュタインハウスは2010年代の世界でナンバーワンといっていい優秀な主審だった。身長181センチ、男性選手の間にはいってもひけをとらない長身で、常にクールにてきぱきと判定を下すレフェリングは高い評価を受けた。
ちなみに彼女は、2011年の女子ワールドカップ、2012年のオリンピック女子の決勝戦と、2年連続して「世界一」を決める決勝戦の主審を務めた。試合はいずれもアメリカ対日本。なでしこジャパンが優勝した女子ワールドカップの主審が、シュタインハウスだった。残念ながら2020年に引退したが、もしまだ現役だったら、今回のワールドカップの舞台に立つ可能性は高かっただろう。