ワールドカップが近づいてきた。本番に向けた準備も進んでいくが、それは選手にとっての負担の増加を意味する。サッカーの世界は正しい方向に進んでいるのか。サッカージャーナリスト・大住良之が考察する。
■日本代表23人が欧州組
6月の4試合に臨む日本代表28人のメンバーが発表された。新しい選手はシュツットガルトのDF伊藤洋輝だけで、他はアジア最終予選を戦ってきたメンバーである。そして、もはや驚くことではないが、28人中23人が、欧州クラブ在籍選手である。
このリストを見て最初に感じたのは、「代表選手たちはいつ休めるのだろうか」ということだった。6月は、「秋春制」のシーズンを採用する欧州のクラブにとっては、本来「オフシーズン」の期間である。日本代表選手たちはそのオフを半ば以上返上して代表活動に参加することになるのだ。
開幕が5か月半後とはいえ、ワールドカップの準備のために残された時間は本当に少ない。6月の16日間(5月30日~6月14日)の活動を終えると、次に集まれるのは9月19日~27日の9日間(2試合)のみ。ワールドカップに向けた準備に正式にはいることができるのは、大会開幕のわずか1週間前、11月14日になるので、この日に直接(欧州の選手は欧州から)カタール入りし、トレーニングを開始するしかない。日本で何か「壮行会」などを企画したいところだろうが、欧州のクラブに所属する選手たちをいちど日本に戻してからカタールに出発するという馬鹿げたことをする余裕などない。