■『NO GUTS,NO GLORY』
不思議を生み出した最も大きな要素は、戦術ではない部分での“浦和はこうあるべき”というものだ。
浦和は3カ年計画の最終年を迎え、優勝という目標を掲げながらも、この試合まで5試合連続で引き分け。12試合で勝ち点12の16位となっていた。
この日、浦和サポーターは『THIS IS URAWA』の文字を掲げて入場してくる選手たちを迎えた。それは整列が終わり、集合写真の撮影が終わり、円陣が組まれてもまだ片付けられなかった。
キックオフの笛が吹かれても、少しの間まだ掲げられていた。その様子は、この試合で選手たちにどういう姿を見せてほしいのか、という要望を強く感じさせるものだった。今シーズンの本来のチームの立ち位置を象徴する『浦和の男なら掲げたものは死ぬ気で掴みとれ』という手書きの横断幕は、この日はゴール裏中央の目立つ位置に試合中も掲出された。
しかし浦和はあっけなく3失点。いいようにやられてしまうだけでなく攻撃しようとしても前に進むことができない状態になってしまっているチームに、スタジアムは怒りを通り越して失望していた。3失点目を喫した選手たちが自主的に集まって話し合い、戦い続ける意思を見せた時こそ拍手が起こったが、0-3のまま45分が終わり、先の手書きの横断幕はハーフタイムに撤収され、以前からスタジアムの光景の1つとしてある『NO GUTS,NO GLORY』の幕に替わった。