サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、あの「不可解なやつ」―。
■素人には不可能な「神業」
FIFAの審判委員会は、オフサイド判定の難しさを知ってもらおうと、取材にきていたメディア関係者たちにもこのトレーニングを経験させた。いっしょに取材に行った日本の若い記者が挑戦したが、5回やって1回も正解しなかった。
こんな「困難の十乗」のような状況でなくても、オフサイドの判定は難しい。副審以外の人、たとえばベンチの監督や選手、スタンドの観客、そして私たち記者も、たいていはボールを追いながら試合を見ている。ボールが前線にけられた瞬間に最前線を見ると、ボールを受けるFWがDFラインより5メートルも前に出ている。当然オフサイドだと思う。しかしリプレーを見ると、けった瞬間にはほとんど並んだ状態であったことがわかる。そしていつも、「神業」のような副審の判定に驚くのである。