大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第89回「オフサイドはなぜ反則か」(4)判定システムが突きつける「文化の質」の画像
正確な判定だけではなく、サッカーに求められるものがある 撮影:中地拓也

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト・大住良之による、重箱の隅をつつくような、「超マニアックコラム」。今回は、あの「不可解なやつ」―。

■素人には不可能な「神業」

 FIFAの審判委員会は、オフサイド判定の難しさを知ってもらおうと、取材にきていたメディア関係者たちにもこのトレーニングを経験させた。いっしょに取材に行った日本の若い記者が挑戦したが、5回やって1回も正解しなかった。

 こんな「困難の十乗」のような状況でなくても、オフサイドの判定は難しい。副審以外の人、たとえばベンチの監督や選手、スタンドの観客、そして私たち記者も、たいていはボールを追いながら試合を見ている。ボールが前線にけられた瞬間に最前線を見ると、ボールを受けるFWがDFラインより5メートルも前に出ている。当然オフサイドだと思う。しかしリプレーを見ると、けった瞬間にはほとんど並んだ状態であったことがわかる。そしていつも、「神業」のような副審の判定に驚くのである。

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