■機械がすべてを担うのか

 「機械になる」と語った相樂亨副審は、4年後のブラジル大会の前には「私の仕事は、いずれ機械に代わられると思います」と話した。オフサイドの判定は、単純に出ていたかどうかだけでなく、FWがハーフラインを越えていたかどうか、そもそもボールをけったのがどちらのチームの選手なのか、そしてボールがけられた方向にいた選手がオフサイドの反則として罰せられるようなプレーをしたり、しようとしていたかなど、非常に複雑な要素がからむ。しかしこうした要素を無数に「AI」に学習させれば、やがて、カメラとコンピュータを連動させることで瞬時にオフサイドの判定ができるのではないか―。

 実際、FIFAは昨年11月~12月の「FIFAアラブカップ」(カタール)と、ことし2月の「FIFAクラブワールドカップ」(UAE)の2大会で、「半自動化されたオフサイド判定」をテストしている。

 といっても、副審の代わりにロボットがタッチライン外を走ったり、副審がオフサイドの判定をやめてしまったわけではない。VARでオフサイドをチェックしなければならないケース(主に得点か得点でないかのとき)で、現在はオペレーターの手作業でやっているオフサイドラインの線引きを機械化・高速化しようという試みだった。これはVARのテクノロジーの問題であり、ルールの問題ではないので、ルール改正の手続きを経ずにことしのワールドカップで使用される可能性は高いようだ。

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