■最初の重要なオフサイド改革
さて、この「初期オフサイドルール」は実に短命だった。わずか2年数か月後、1866年の2月には、大幅な制限緩和が断行される。「ボールより前にいる選手」は「アウト・オブ・プレー」なのだが、そこに「相手ゴールとの間に3人以上の相手選手がいる場合」にはこの限りではない、すなわち反則にはならないとされたのである。
このルール改正こそ、ラグビーとあまり代わらなかったサッカーを独自の競技にした最初の重要な改革だった。新しいオフサイドルールにより、前にいる選手にパスを渡すことができるようになったからだ。イングランドでは相変わらず下げたボールを受けた選手が力いっぱい前にけり、何人もでそれを追うという「キックアンドラッシュ」戦法が続けられたが、スコットランドではショートパスをつないで相手ゴールに迫る戦法が生み出され、大きく戦術を進化させた。
この後、「自分の前に何人いるかなんて数えられないから、いっそのことオフサイドをなくしてしまおう」という案や、「いや、初期のルールに戻そう」という提案、そしてまた、「1人制オフサイド」の提案など、さまざまな意見が出された。しかし基本的には、1925年に「2人制」に変わるまで、「3人制オフサイド」の時代は60年間の長きにわたって続くのである。
小さな修正が1907年にあった。スコットランドから提案のあった、「オフサイドになるのは相手陣のみ」という改正である。最初は「ハーフライン近くで待ち構えるFWばかりになってしまうのではないか」と反対されたが、この改正も、現代につながるサッカーらしさを生むのに大いに役立った。