■もともとは工事用具だったコーン

 そう、このころサッカーのトレーニングで使われ始めた「コーン」は、道路工事用のものだった。発明者は「チャールズ・D・スカンロン」というアメリカ人であり、1943年のことだったこともわかっている。

 スカンロンはロサンゼルス市の道路補修部門のスタッフであり、舗装道路にさまざまな線や指示などを白ペンキで描く仕事をしていた。当然、作業をするときには道路の一部を閉鎖しなければならないのだが、それを示すために当時使われていたのは木の板を3枚組み合わせ、それに底面をつけた「三角錐」の標識だった。だがこれは壊れやすく、しかも目立たないので、交通の邪魔になるばかりでなく、しばしば作業員たちをひやりとさせた。

 そこでスカンロンが考案したのが、ゴム製で円錐形をした標識だった。目立つようにと、ゴムは真っ赤に塗られた。仮に車にはね飛ばされても、ゴム製だから壊れず、しかも「起き上がりこぼし」のように自然に立つのが売り物だった。この円錐形のゴムのかたまりは、「トラフィックコーン」の名で呼ばれ、アメリカ全土に広まった。

 やがて第二次世界大戦後には英国でもこの「ゴム製トラフィックコーン」が使われるようになる。そして1961年、「コーン史」にとって大きな「飛躍」が訪れる。コッツウォルドのバーフォードという小さな町の「デービッド・モーガン」という人が、軽いプラスチック製の「トラフィックコーン」を試作したのである。やがてこれが一世を風靡し、廃プラスチックからリサイクルされたオレンジ色に近い赤のコーンが、世界中の道路工事現場で使われるようになる。そして手軽に手にはいるようになったこのコーンに、サッカーのコーチたちが目をつけたのだ。

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