■オーストラリア戦での懸念と勝機
今回乗り込むオーストラリアは、他のアジアの国のような難しさはないという。日本との時差は小さいが、懸念される点もある。
「試合の1日前にならないと全員が集合できないと言っていましたから、すごく難しい試合になると思いますよ。ちゃんとした紅白戦ができないわけですから。
あとは、スタジアムの雰囲気ですね。観客が6万人くらい入るらしいと聞いています。ただしオーストラリアのファンは、イランのような迫力ある応援ではなく、どちらかというとお祭りというか、イベントに来ているような雰囲気。だから圧力はそれほどでもないとは思いますが、最近はコロナ禍で、たくさんの人が入る環境でプレーしていない選手もいるから、どうなのかな、とは思いますね」
それでも池内氏は日本代表の勝利を信じる。
「勝ちますよ。根拠? もう日本代表が、普通の状況になっていますから。今までの予選と違ってコロナがあったり、去年はオリンピックがありました。蓄積された疲れや、普段の予選とのリズムの違いがありましたが、メンタル的にも整ってきたと思うんです」
また、大迫勇也や酒井宏樹ら、急きょメンバーに入れなくなった選手も出てきたが、代役が活躍する可能性も十分にある。ドルトムントでブレイクする前の香川真司、前回のオーストラリア戦で交代出場から決勝点を誘発した浅野拓磨は、ともにW杯でバックアップメンバーという立場を経験している。2人が本大会に出ていたら、日本代表の運命はまた違うものになっていたかもしれない。
「意外とそういう選手って、土壇場で何かやってくれるものなんですよ」。選手や監督と同様に、ポジティブさを失わずに、池内氏はそう「予言」した。
<プロフィール>
いけうち・まこと 1969年、東京都生まれ。横浜マリノス(当時)やベガルタ仙台などでトレーナーを務め、2006年のイビチャ・オシム体制から日本代表のアスレティックトレーナーに就任。南アフリカ大会、ブラジル大会、ロシア大会のワールドカップ3大会を含む、在籍中の全活動に帯同した。2019年に都内に「俺の治療院」を開業し、子どもから高齢者、世界で活躍するトップアスリートまで幅広く施術。後進の育成も目指している。