現代では、スポーツとテクノロジーは切り離せなくなっている。スタジアム、あるいは離れた地からの観戦はもちろんのこと、試合の運営、さらにはチームづくりにも不可欠なピースとなりつつある。
サッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)、ラグビーのTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)、テニスのチャレンジシステム...。これらの運用を可能としているソニーのグループ会社「ホークアイ・イノベーションズ」の日本及びアジアパシフィック地域における事業展開をリードしている山本太郎氏に、テクノロジーとスポーツの融合がもたらす可能性について話を聞いた。
■ヤクルトスワローズの挑戦
現代のスポーツに、データは欠かせない。ホークアイはVARなどを売り物とする「判定ビジネス」であると同時に、データも「商品」として扱っている。
サッカーであれば、よく知られるデータは選手の走行距離だろう。1試合につきそれぞれの選手がどれほど走ったのかは、働き具合を測る指標のひとつとして扱われる。
日本でもJリーグが選手の走行距離やスプリント回数をファンが閲覧できるよう公式ホームページで公表しているが、ホークアイのサービスから得られたデータを自ら活かした例が他競技で存在する。プロ野球で前年のリーグ最下位から一転、2021年に日本一に輝いた東京ヤクルトスワローズである。
スワローズの本拠地である明治神宮野球場に複数のカメラを設置し、選手の動作解析を行った。ピッチャーの投球フォームや、投じたボールの回転の回数や方向など、これまでよりさらに細かくデータ化した。