現代では、スポーツとテクノロジーは切り離せなくなっている。スタジアム、あるいは離れた地からの観戦はもちろんのこと、試合の運営、さらにはチームづくりにも不可欠なピースとなりつつある。
サッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)、ラグビーのTMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)、テニスのチャレンジシステム...。これらの運用を可能としているソニーのグループ会社「ホークアイ・イノベーションズ」の日本及びアジアパシフィック地域における事業展開をリードしている山本太郎氏に、テクノロジーとスポーツの融合がもたらす可能性について話を聞いた。
■感動を与えるテクノロジー
画面の中で、動いていた点の軌跡が線となり、次第に選手の体の輪郭を取り始める。表れたピッチの上では、ボールだけではなく複数の選手の動きがトレースされていく。その動きを追う視点は、空を飛ぶ鳥の目を通しているように、あらゆる角度から視認できる。上空からの俯瞰も、選手にぶつかるほどの密着も、ズームIN&OUTが可能。見えないものは何もない、と言っていい。
サッカーのプレーを複数のカメラでとらえた画像の再現は、もはや単なるコンピューターグラフィックス(CG)の域を超えたコンテンツとなっている。英国ではすでにメディアによる利用が開始されており、イングランドのプレミアリーグの放送では、ハーフタイムなどでプレーの再現や分析をする際に用いられた。
「弊社には、“クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす”というポリシーがありますから」
こうした「コンテンツ」の作成を可能にする技術を提供している、ホーク・アイ・ アジアパシフィック ヴァイスプレジデントの山本太郎氏は、そう語る。
「EPTS(エレクトロニック・パフォーマンス・トラッキング・システム)といって、トラッキング(人や物の動きの追跡)のためにカメラで撮った映像の中から骨格データを抽出し、バーチャルでリクリエーションすると、CG化できます。今では、ほぼリアルタイムでCG化できるようになっています」