■「新たな気持ちで戦える緊張感」を楽しみに
戦いのレベルだけを考えれば、J2やJ3のクラブを選ぶこともできたはずである。そこでJFLに飛び込むところが、いかにもカズらしい。
彼のキャリアは、意外な挑戦の歴史でもある。
ブラジル武者修行、イタリア、セリエA・ジェノア移籍を経て、2度目のヨーロッパ挑戦となった1998年のクロアチア・ザグレブ入りは、周囲を驚かせるものだった。クロアチアから京都パープルサンガ(現京都サンガF.C.)へ移籍するのも、その後ヴィッセル神戸で4シーズン強を過ごすのも、誰もが予想したものではなかったはずだ。
2005年7月の横浜FC移籍は電撃的だった。当時38歳とはいえ、カズがJ2の舞台に立ったのだ。その衝撃はケタ違いだった、と言ってもいい。
今回、複数のクラブから鈴鹿を選んだ理由として、カズは「試合に出られると感じられるチーム」と、「近い将来の目的があるところ」を条件にあげていた。横浜FCで試合出場に飢えていただけに、カテゴリーよりピッチに立てる可能性を重視するのは当然だったのだろう。
そのうえで彼は、今回も挑戦に満ちた日々を求めた。J1やJ2への昇格ではなく、J3昇格に大きな魅力を見出したのだ。そこでは、周囲がどのように評価するのかは価値を持たない。自身にとってやり甲斐があるのかどうかが、カズを衝き動かすのだ。
「鈴鹿ポイントゲッターズがこれまで築き上げてきた歴史があって、その歴史があるうえでJFLで戦っていて、J3に昇格できるチャンスがある位置まで来られたと思うんですね。そこからさらにプロのクラブとして成長していくなかで、J3昇格の権利を取るという1年になると思うんですが、ホントに大変な仕事だと自分でも思っていますし、でもやりがいも大きいですし。
みんなで目標に向かって戦えるこの状況がホントに幸せだと思いますし、いままでにないような新たな気持ちで戦える緊張感を、非常に楽しみにしています」