日本にも起こり得る国境を越えた「スーパーリーグ」設立構想【クラブサッカー激変の時代】(3)の画像
日韓のチームが日常的に戦う「スーパーリーグ」構想が出てこないとは限らない 写真:AP/アフロ

 サッカーは残酷である。白黒がつくのはもちろんだが、資金力が大きな要因となって、勝者と敗者を分かつのだ。
 ヨーロッパではその差を埋める新たな案が浮上しているが、日本にとっても「対岸の火事」ではない。マネーによるパワーゲームで生き残りを懸ける小国の試みを、サッカージャーナリスト・大住良之が読み解く。

■合同リーグ設立への壁

 昨年3月、ベルギーでは25の全プロクラブの総会において全会一致で「ベネリーガ設立に原則賛成」の方向を打ち出した。「この計画は、ビッグクラブが欧州の強豪に伍する力をつけようという野心だけでなく、その他のプロクラブにも経営基盤の安定をもたらす」という結論に達したのだ。「ベネリーガ」への参加が見込めない小さなクラブまでがこの計画に賛成したのは初めてのことだった。

 しかしオランダでは状況が違う。いちばんの懸念は、欧州のクラブカップへの出場枠の減少である。現時点では、予選やプレーオフからの出場で、UEFAチャンピオンズリーグ、UEFA欧州リーグに、ベルギーとオランダはそれぞれ5クラブずつの参加を認められている。しかしもし2か国が1つのリーグになるなら、「最多で7」というのが、欧州サッカー連盟(UEFA)アレクサンデル・チェフェリン会長の意向と伝えられている。

 そして「ベネリーガ」に参加できないクラブは、これまでより一段階低いリーグになってしまうという懸念も大きい。オランダのプロリーグの財政構造は「ビッグ5」と大きく違う。クラブの収入の大きな部分が、テレビ放映権料ではなく、年間チケット、すなわち入場料収入で占められているのだ。その背景には、アヤックスPSVといった「ビッグクラブ」との対戦を心待ちにしている地方のファンがいる。「ベネリーガ」の誕生で彼らのような存在がいなくなった「オランダリーグ」では、年間チケット販売収入が大きく減るのではないかという懸念が非常に強い。

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