しかし、新国立競技場についてはあの“ザハ・ハディド案”の採用が決まったものの、総工費が2500億円を超えると報道されて批判が高まったため、安倍晋三首相が白紙撤回を決定。完成が2019年の秋までズレ込んでしまったため、新国立競技場はラグビー・ワールドカップには使用できず、さらに東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナウイルスの感染拡大によって無観客開催となった。

 つまり、1500億円以上の巨費を投じて建設された新国立競技場のスタンドに満員に近い観客が詰めかけたのは、2020年の元日と2021年12月の2度の天皇杯決勝だけということになる。

■国立競技場はサッカーのために活用されるのか

 陸上競技場では、数万人の観客を動員することはほとんど不可能だろう。もちろん、世界陸上などが開かれれば満員の観客でスタンドは埋まるだろうが、サブトラックがない国立競技場が大規模な国際大会を開催するのは難しい。

 ラグビーでも国立競技場は使用されるだろうが、ラグビーの場合、国立競技場からほど近い位置に秩父宮ラグビー場という2万5000人近くを収容できる専用スタジアムが存在するのだ(2020年代後半には完全密閉型屋根付きのラグビー場に建て替えることになっている)。従って、よほど多くの観客が見込まれる試合以外には、国立競技場がラグビーのために使用されることもないだろう。

「では、国立競技場はサッカーのために活用されるのだろうか?」といえば、こちらもイエスとは言い難い。事実、1月27日と2月1日に行われるワールドカップ最終予選は、芝生の張替え時期をずらしてまでしてサッカー専用である埼玉スタジアムで開催されることになった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3