【スタジアム考察】国や自治体に欠けている重要な視点【新国立競技場の魅力と問題点】(4)の画像
活用法が見えない国立競技場

 年末年始を通じて、「新」国立競技場には多くのサッカーファンが足を運んだ。東京オリンピックのメイン会場になるなど多目的での使用が可能だが、サッカー観戦にも向いているとサッカージャーナリスト・後藤健生は考える。一方で、気になる点もある。新国立競技場の魅力と問題点をひも解く。

■初めて迎えた多くの観客

 この年末年始、国立競技場では1月9日に全国大学ラグビー選手権大会の決勝戦、帝京大学対明治大学の試合が行われたが、こちらの観客は2万4275人だった。かつては、旧国立競技場を満員の観客で埋め尽くした大学ラグビーも最近は集客率が落ちており、この2万人台半ばの観客数もコロナ禍前の数字とほぼ同じである。

 1月7日には新しく発足したラグビーのプロリーグ「リーグワン」の開幕戦、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ対埼玉ワイルドナイツの試合が予定されていたが、埼玉(パナソニック)で9人もの選手が新型コロナウイルスの検査で陽性反応を示したために中止となり、国立競技場で行われたラグビーの試合は大学選手権だけだった。

 つまり、今のところ国立競技場で満員に近い観客を集めることができたのはサッカーだけだったということになる。

 もともと、国立競技場の改築は、森喜朗元総理大臣(元日本ラグビーフットボール協会会長、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長)を中心とするラグビー・ワールドカップ2019日本大会成功議員連盟がラグビー・ワールドカップの決勝戦の会場とするために改築を主張したことがきっかけとなった(東京都は最初に2016年大会の開催地として立候補した時には臨海部に新スタジアムを建設する計画だったが、この大会はリオデジャネイロ開催が決まり、2020年大会を目指して2度目の立候補をした時にはラグビー・ワールドカップのために改築が決まった新国立競技場をメイン会場とした)。

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