■進む新世代の指導者の台頭

 W杯予選敗退の悲劇以前から、セリエAが低迷期にあったのは周知の事実だ。イタリア勢がチャンピオンズリーグ(CL)を制したのは、2010年のインテルが最後。国内9連覇の偉業を成し遂げたユヴェントスは、2015年と17年にCL決勝へと進出したが、決勝ではスペインの2強に手痛い敗戦を喫し、準優勝に終わっている。

 なにより、ユーヴェと並ぶ北の3強の残り2チーム、インテルとミランのミラノ勢の低迷が大きかった。南の雄であるローマナポリは国内でユーヴェとタイトルを競い、欧州でも一時期ファンを沸かせたものの、真の強者となるには至らなかった。

 そんな中で登場したのが、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ率いるアタランタだ。就任1年目からセリエAで4位と飛躍すると、2018-19シーズンからは3年連続で3位。当時は「イタリアのレスター」と言われた彼らは、すでに欧州の舞台でも押しも押されもせぬ好チームとして認知されている。

 プレミアリーグでのレスターのように、タイトル獲得には至っていない。だが、国内の強豪が欧州で期待されるような結果を残せない一方で、強度の高いガスペリーニのサッカーは国内外で評価を高めた。カルチョの世界でも「欧州型」を評価し、求める声は強まっていった。

 さらに、ガスペリーニに続く世代の指導者たちが台頭したことも寄与した。

 筆頭は、3シーズンでサッスオーロを中位クラブとして確立させ、今季からシャフタール・ドネツクで指揮を執るロベルト・デ・ゼルビだ。ほかにも、ガスペリーニの愛弟子イバン・ユリッチや、昨季スペツィアで名を上げ、今季からフィオレンティーナを率いるヴィンチェンツォ・イタリアーノなど、30代、40代の指揮官たちが「プロヴィンチャ」(地方の中小クラブ)で改革を進め、脚光を浴びている。

 

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