後藤健生の「蹴球放浪記」連載第79回「ゴーストタウンのような蟹街」の巻(1)「U-21日本代表を追いかけて」の画像
もちろんサッカー取材のために中国へ。決して目的はカニではない 写真提供/後藤健生

蹴球放浪家・後藤健生を動かす源は、知的好奇心である。そのフィールドに国境はない。「食」というカテゴリーも、蹴球放浪家のテリトリーであるのだ。

 秋は上海ガニ(蟹)の季節です。世界中の中華料理店の前には藁で縛られたカニさんたちが並んでいることでしょう。藁で縛るのは、運搬中にハサミで互いを傷つけてしまうのを防ぐためです。

「上海ガニ」というのは、和名で「チュウゴクモクズガニ」(中国藻屑蟹)と呼ばれる淡水性のカニで、中国大陸や朝鮮半島に住んでいます。一般的には蒸して食べますが、海のカニに比べて身が小さいので結構食べにくいカニです。身よりもミソが美味いんですよね。

 今回は、その上海ガニのお話です。

 2018年1月に中国でAFC U―23選手権が開かれました。2年に1度開催される大会で、オリンピックの年に開かれる大会はオリンピックのアジア予選を兼ねています(2020年大会は新型コロナウイルス感染症拡大直前の1月にタイで開かれました。そして、それが僕にとって最後の海外旅行になってしまいました)。

 オリンピック中間年の大会には日本はUー23代表ではなく、毎回、次のオリンピックを目指すUー21代表を送り込んでいます。2018年大会も森保一監督が就任して、2020年大会を目指して強化が始まったばかりのUー21代表が参加しました。当時の招集メンバーのうち、実際にオリンピックに出場したのは板倉滉三好康児前田大然旗手怜央の4人だけ。「その後のチーム内競争がいかに激かったのか」ということを改めて実感します。

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