■逆転を呼んだ川崎らしい用兵

 さて、どうするか……。

 ここで、様々な変化ができるところが川崎の強味だ。ベンチに控えるレギュラークラスを一気に投入するのではなく、まず登里享平を入れて、サイドバックでプレーしていた旗手怜央を2列目に上げる。そして、宮城と遠野大弥の両サイドハーフを退けて、マルシーニョを入れて川崎が多用する4-3-3の形に変更したことによって、攻撃力を上げることができたのだ。

 そして、それでもゴールが遠いと見ると、後半は右サイドでプレーしていた小林悠に代えて家長昭博を投入。すると、1分後、その家長から左の車屋紳太郎へのチェンジサイドから攻撃が始まり、最後は再び右に振って、山根視来が上げたクロスに飛び込んだ旗手が頭で合わせて同点とした。

 それでも勝ち越し点が奪えず、このまま引き分けかと思われた後半のアディショナルタイムには旗手が強引にペナルティーエリア左に持ち込んだところからつないで、最後は家長が正確無比のクロスを入れ知念慶が再びヘディングで決めて川崎は土壇場で勝点3を拾って首位の座を安泰とした。

 旗手がポジションを上げることによって生き生きとした動きを取り戻したり、また、橘田健人がボランチとしても素晴らしいプレーをするあたり、いくつものポジションをこなせるポリバレントな選手が多い川崎らしい用兵だった。そして、最後は家長という絶対の存在が相手陣内深い位置で何度も起点を作って攻め勝った。

 第29節の鹿島アントラーズ戦でも、川崎は内容的には圧倒され、「配色濃厚」という中で交代出場した山村和也が、直後のFKからヘディングで同点ゴールを決め、90+4分に20歳の宮城が決勝ゴールを決めて勝点3を積み重ねていたが、湘南戦でも同じ90+4分の決勝ゴールで再び勝点3。この2つのアディショナルタイムのゴールがなければ、勝点は4つ減っていたことになる。

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