■チーム事情にも合致する「インサイドハーフのアセンシオ」

 アセンシオの特徴は、パンチの効いたミドルシュートと推進力のあるドリブルだ。一方で、ベイルのようなスピードや、ヴィニシウスのような突破力は持ち合わせていない。そのアセンシオを生かせるポジションは、ジダン前監督が使っていたウィングではなく、インサイドハーフなのである。

 今季、ウィングのポジションでは、アザールやベイルの復活が期待されている。そして、ヴィニシウスやロドリゴといった若きアタッカーを育てながら、アンチェロッティ監督は戦っていくつもりだろう。加えて、キリアン・ムバッペパリ・サンジェルマン)獲得の噂が絶えない。前線にはスピードとパワー、さらに決定力を兼ね備えた選手が、必要とされているのだ。

 アセンシオは、R・マドリード加入以降、公式戦195試合に出場して37得点を記録している。そもそも、それほど得点力のある選手ではないのである。

 ただ、先述したように、彼は強烈なミドルシュートでゴラッソを沈められる。そのためには、サイドに置かれてカットインしてシュートを放つより、ある程度距離のあるところからシュートを打つ機会が多い方がいい。また、ミドルゾーンでは、アタッキングゾーンよりスペースがあり、マークも緩くなる。

 アセンシオをインサイドハーフに置くのは、選手の特徴を生かすために、さらにはチーム事情に顧みても合致している。

 この夏、マルティン・ウーデゴールのアーセナル移籍が決まった際、アンチェロッティ監督は「彼のポジションには8人の選手がいる」と語っていた。カゼミーロ、モドリッチ、トニ・クロースの盤石の中盤に、バルベルデという若手の台頭があり、そこにアセンシオやダビド・アラバをコンバートしながら加えていくのであれば、新生R・マドリードの戦術の深みは増すはずだ。

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