■「なでしこジャパンはたいへん残念でした」
東京オリンピックのなでしこジャパンは、「ベスト8」という結果はともかく、茫然とさせられる試合内容だった。発展を続ける欧州や北米のチームに対し、なでしこジャパンはかつてもっていた
「グループで戦う」という良さを出すことができず、選手たちは懸命にがんばっていたものの、世界のトップクラスのチームに対しては1分け2敗(1−1カナダ、0−1英国、1−3スウェーデン)。守備面では相手のパスワークとスピードに圧倒され、効果的に相手を崩す攻撃がほとんど出なかった。
世界の強豪と再び伍して戦えるようになるために、日本の女子サッカーは、そしてなでしこジャパンを支える日本最初の女子プロリーグ「WEリーグ」は、どのような方向性をもたなければならないのだろうか——。
ドイツで豊富な指導経験をもち、女子サッカーにも関心が高く、現在は千葉県1部リーグの「房総ローヴァーズ木更津FC」の監督を務める片山博義さん(48歳)に聞いた。
——東京オリンピックの試合はご覧になりましたか。
片山「もちろん、全部見ましたよ。なでしこジャパンは、非常に残念でした」
——どのような問題点を感じられましたか。
片山「岩渕真奈しか攻撃の核がなく、彼女がボールをもったときには相手を引きつけてパスができるから、周囲、とくに田中美南がはいったときには可能性のある攻撃もできかけましたが、他の場面ではほとんど相手が脅威と感じる攻撃はできませんでしたね」
——その原因は?
片山「ボールはいつも『各駅停車』で、パスが渡るたびに相手と1対1、ときには1対2の状況になっていた。最後のスウェーデン戦は今回の4戦のなかでは最も良かったと思いますが、それでも『各駅停車』の問題点はあまり改善されていなかった。なぜあれを修正できないのかと、見ていて感じました」
——個々の選手のボール技術だけを見れば、2011年に女子ワールドカップで優勝したときよりはるかに上の選手がそろっていたと思いますが。
片山「それは間違いありません。しかしそうした選手を組み合わせる、2人ではなく、3人、4人で組み合わせるということができていませんでした。一か八かの勝負のパスか、1対1かというプレーが多く、相手が構えてプランどおりの守備を構築しているところに飛び込んでいくような攻撃ばかりだったという印象があります。相手に、誰をマークしていいのかわからなくさせたり、無我夢中にボールだけを追わなければならない状態に追い込むようなボールの動かし方ができなかった印象があります」
——私も同じように感じました。