■「ルールを守ればOK」ではない
サラリーキャップの上限額は、クラブの収入に伴って変化する。近年のバルセロナのサラリーキャップの上限額は、2016-17シーズンは4億3200万ユーロ(約561億円)、2017-18シーズンは5億8800万ユーロ(約764億円)、2018-19シーズンは6億3200万ユーロ(約821億円)、2019-20シーズンは6億7100万ユーロ(約872億円)と、世界的に広がる人気に沿って右肩上がりに伸びていた。
だが、その上限額が2020-21シーズンは3億8200万ユーロ(約496億円)に落ち込んだ。新型コロナウィルスのパンデミックによる影響を、もろに受けた格好だ。
ラ・リーガのハビエル・テバス会長が「(人件費がサラリーキャップの定める)リミット寸前にまで行ったら、ビッグクラブでは問題になる」と語っている。バルセロナは、まさにそうした状況に陥っていた。
特にひどかったのが、2019-20シーズンだ。選手の総年俸額と移籍金の支払いの残りで、人件費として6億3600万ユーロ(約826億円)の出費があった。実に予算の66%にあたる額だった。
先述したテバス会長の言葉の通り、サラリーキャップのリミット寸前まで資金を使えば、ビッグクラブといえども問題が生じる。たとえルール上では70%まで使うことが可能だとしても、40%か50%に出費を抑え、残りはプールするといった発想が必要なのだ。そういった考えがなければ、高年俸のスタープレーヤーを複数年にわたり抱え続けながら補強を行っていくことはできず、さらには自分たちの首を絞めていくことになる。
確かに数字的には、ルールは守られている。だが、やせ細った人間が風邪を引きがちであるのと同様に、蓄えのない経営は非常に危ういものだ。サラリーキャップの問題に関しても、メッシの再契約、さらにまさかまさかの、一転しての電撃退団についても、バルトメウ前政権時代からの悪しきクラブ体質がいまだに消え切らない結果だと言える。