まさに青天の霹靂だった。リオネル・メッシが、バルセロナを退団した。
退団前にも、バロンドール(FIFAバロンドール含む)を6度受賞している選手が、フリーの身になっていた時期があった。過去、フットボールの世界でこのような前例はない。
契約満了後、メッシと再契約で基本合意に至ったが、一転して退団へと至った。これは単なる一つの問題ではない。バルセロナの裏には、すでに深い闇が見えていたのだ。
■バルサを悩ませるサラリーキャップ
なんとかメッシと再契約を結んだが、問題はまだ残されていた。サラリーキャップ制度に付随するものだ。
2013年、ラ・リーガにサラリーキャップ制が導入された。当時のスペイン政府スポーツ上級委員会(CSD)とスペインプロリーグ機構(LFP)が、人件費の上限額を定めるサラリーキャップ制の導入を決定。その目的はリーガエスパニョーラ1部と2部のクラブの債務削減にあった。
もともとスペインでは、ラテン気質なのか借金を気にする風潮がない。極端に言えば、彼らは“その日暮らし“だ。「今日のパンを優先して、明日は空腹になる」という慣用句が存在するくらい、スペインにおいては”現在“が重視される。だが、その中でもバルセロナのずさんな「どんぶり勘定」は、頭抜けていた。
サラリーキャップ制において、各クラブは選手の総年俸額および移籍金の減価償却費を予算の70%以内に抑える必要がある。ジョアン・ラポルタ会長曰く、この夏の時点でバルセロナのそれは「110%に達していた」という。
サラリーキャップの制定のみならず、スペインのリーグ運営者には各クラブに健全経営をしてもらいたいという思いがあった。しかし、バルセロナは完全にその逆をいってしまったのだ。