■審判の判断基準は「妥当性」にある?

 ところが、5月31日に日本サッカー協会の審判委員会が開催した「2021/22競技規則説明会」で詳細な説明を聞き、驚いた。IFABは当初の印象から大幅に後退し、熊谷のケースを含めて、多くのプレーを反則としたからだ。熊谷のケースでは、彼女はシュートを予測してそれにチャレンジしているので、ボールがくることは予測できた。だから体から離れている腕に当たったプレーが「ハンドの反則」だという。

「体を大きくしているかどうか」の判断基準は「妥当性」にあるという。プレーなどの一環として体を動かした結果、手や腕がその位置にあることが、「受け入れられる」、「理解できる」あるいは「そうなるだろうと考えられる」ということが判断基準となり、ボールのスピード、ボールとの距離も考慮点になるという。

 正直なところ、私自身は、IFABが用意した映像(IFABの公式サイトで公開されている)や、それを元に日本サッカー協会が用意し、現在その公式サイトで公開している映像を見ても、どれが「妥当な手の位置」で、どれがそうでないか、その線引きがよく理解できない。それほど際どいところで、ファウルかそうでないか、ペナルティーエリア内であればPKかそうでないかが分かれることになるのだ。

 そもそも、本来は「ボールを手で扱うこと(ハンドリング)」だった反則が、「ハンドボール(handball)」と混在してしまっているのが問題のように感じる。ルール上でも、第12条のなかでこの2つの表現が混在している。そしてIFABも「ハンドボール(日本協会はその日本語訳を「ハンドの反則」と訳している)」という表現を繰り返し使っている。

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