手や腕を使わなければ、からだのどこでボールを扱ってもいい。そこには大いなる自由がある。しかし、わざと手や腕を使ってボールをプレーすればハンドリングの反則になり、フリーキックの罰則をとられる。偶発的に手や腕に当たったのなら反則にはならない。この大原則が、あいまいになりつつある。サッカーのルールを決める国際サッカー評議会(IFAB)が制定した新ルール(7月1日から施行される2021/22版)には、根本的な考え方に疑問を呈せざるを得ない。再考を求めたい――。
■偶発的に手に当たったのなら
ハンドボールのGKは、至近距離から投げられるシュートに反応している時間がない。そのため、シュートが投げられる瞬間には、両手と両足を広げて「どこかに当たってくれ」というプレーをする。ことしのルール改正によって、私は、そうしたあからさまな「体を大きくする」行為によってボールが手や腕に当たった場合だけが反則になると考えた。
たとえば、2013年6月のワールドカップ予選、オーストラリア戦で、本田圭祐が入れたクロスが相手DFのマット・マッケイに当たってPKになったシーン。マッケイは腕を体の下に下ろし、不自然に広げていたわけではない。どちらかといえば、本田のクロスがマッケイの手に当たったという形だった。
また2019年女子ワールドカップ、ラウンド16の日本対オランダ、相手のシュートに対し身構えた日本DF熊谷紗希の左腕に当たったシーン。熊谷の腕はわずかに体から離れていたが、ハンドボールのGKのように広げていたわけではない。
こうしたプレーが反則になるなら、守備側は両手を後ろで組むしかなくなる。それはサッカーという競技の「自然さ」「自由さ」を著しく損ない、魅力を失わせるものだ。今後はこうした判定がなくなるのではないかという期待がふくらんだ。