■UDオリヴェイレンセを日本サッカーの“欧州の拠点”に

――改めてUDオリヴェイレンセの経営方針を教えてください。

「我々のクラブは、日本人が経営するクラブながら、ヨーロッパのポルトガルにあるクラブです。また、現状は、シント=トロイデンのような有名な日本人選手が所属する、獲得できるクラブでもありませんので、なかなかメディアなどにも取り上げてもらうことが少ないのが現状です。

 我々のクラブの経営理念のひとつに、日本人の若い選手、今後ヨーロッパの舞台でチャンスをつかみたいと思っている選手に、戦う環境を提供したい、というものがあります。今回のクラブトークン発行(株式会社フィナンシェが運営)の目的のひとつは、これを機に、当クラブの理念、存在を広く知っていただきたいということがあります。

――サッカークラブ経営の世界で注目を集めるクラブトークンを通して、クラブの認知度を上げたいということですね。

「そうです。加えて、当然、クラブの資金調達ということもあります。ポルトガルにあるクラブですし、コロナ禍の今、日本人客が見に来てくれることもない。試合がテレビでやっているわけでもないので、そういう状況下で、日本企業のスポンサーを集めるのも難しい。

 クラブを知っていただく、そして資金面のこと、この2つがクラブトークンを発行した大きな理由です。

 また、我々は、私とオーナーの金哲碩(株式会社f4samurai代表取締役)を中心に、さまざまなビジネスシーンで活躍するサッカー好きのビジネスマンの方に集まっていただき、当クラブ、そして日本サッカーを今後より強くしていきたいという思いを持って活動するワーキンググループを作ったんです。それも大きなきっかけとなりました」

――山形さん、金オーナーを含めたワーキンググループでクラブトークンを始めたということでしょうか?

「そうです。ワーキンググループでは、これまで、サッカー界ではあまり取り組んでこなかったビジネスの手法、アイデアなどを用いて、クラブの発展、そしてその先に日本サッカーの強化、発展も見据えて、さまざまな新たな取り組みを行なっていければと思っています。

 また、私とオーナー、今いるワーキンググループのメンバーだけでなく、さらに新たな方々にUDオリヴェイレンセのクラブ経営にかかわっていただきたいと考えているんです。経営にがっつり関わっていただく方、今回、クラブトークンを買っていただいた人にも、クラブを支えていただく。そうやって、みんなでクラブを作っていくことで、選手、指導者、トレーナーなど日本人が活躍できる日本サッカーの“ヨーロッパの拠点”を絶やさないようにしたいと思っています」

 今回、クラブトークン購入の特典として、購入額に応じて、投票企画・抽選応募への参加、初期サポーター記念コレクションカード、オリジナルTシャツなどがある。

UDオリヴェイレンセのクラブトークンの仕組み図 (提供画像)

「もちろん、そうした特典もありますが、初期段階からクラブにかかわっていただく、ここに大きなメリットがあるのかなと考えております。

 世界的に見てもクラブトークンの文化はまだまだ未成熟です。我々のサービスもまだまだ未熟なものです。でも、5年後、10年後には大きな未来があるのではないかと。10年前のビットコインに今のビットコインの状況が想像できなかったように、一緒に夢を見ていけるものになればと考えています。そして、そうなるように、最初に夢を見てくれた人に恩返しできるように、我々はしっかりクラブ運営をやっていきたいと考えています。

 Jクラブとの提携、日本人選手の獲得など現在進行形で動いておりますが、ポジティブな情報が出ることによって、オリヴェイレンセのトークンの価値が上がっていく、そうなることで将来、リターンできるようになればと考えています」

【後編に続く】

■山形伸之 やまがた・のぶゆき■ 1970年東京生まれ。2017年、DMMによるシント=トロイデンVVの買収と経営に参画。クラブ買収時には現地に飛び、元オーナーと直接交渉にあたる。2019年12月から日本企業、株式会社ナッツアンドアバウトが買収したポルトガル2部のUDオリヴェイレンセ社長に就任した。

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