■伸びる若手の条件

 冗談を交えながら語る長友だが、この一戦の重要性は理解している。相手に上回られた際、よりダメージが大きいのは「兄貴分」の方だ。日本代表であり、年齢を上から数えた方が早い長友にとって、危険な一戦でもあるのだ。

「この試合で一発逆転を狙っている選手は確実にいると思うんですよね。五輪代表もそうだし、日本代表の中でもここでアピールしてレギュラーを狙ってやろうと。全員そうだと思うんですよ。この1試合で序列が変わる可能性は大いにある。レギュラー争いの勝負というのは絶対に勝ちたいですね。そこは自分自身しっかりと持って、(ポジションを)守りたいと思います」

 長らく日本代表のサイドバックとして君臨してきた長友だが、自身の居場所を守ることだけがサムライ・ブルーとして活動する目的ではないという。

「日本代表に来ているテーマは2つあって、ひとつはレギュラー争い。あとは自分の経験やより高い意識を、メンタル的にも技術的にも、世界を見据えたより高い意識というものを若い選手に伝えていきたい」

 押しつけはしないが、来る者は拒まない。実際に長友の実感として、物怖じせずに長友らベテランにコミュニケーションをとり、多くを学ぼうとする若手の方が日本代表や所属クラブでの存在感、出す結果や伸びしろで違いを見せつけるのだという。

 人付き合いなどのコミュニケーションにはそれぞれ得手不得手があるが、「サッカーと同じで、人は意識で変わると思う」と長友。そうして新たに切磋琢磨する仲間を得ることで、「僕の意識を変えさせてもらっている」と成長の糧として自身にも還元しているのだ。

「日本代表はその時に一番良い状態の選手、一番力のある選手が出るべき。僕を越えていくためには、所属クラブで圧倒的な結果を残さないといけないし、日本代表は若手を育てる場所ではないので。今、ベストの選手たちが集まり、11人が選ばれてプレーするのが日本代表だと思っている。所属クラブ、厳しい環境の中で結果を出してもらわないと、僕を越えてはいけないんじゃないかと思います」

 日本代表のために、長友は高い壁であり続ける。

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