■おいしいお肉の話

 今回の「放浪記」のテーマはそんな“俗説”とはまったく関係ありません。先週の「第57回」でブライ(南アフリカ式BBQ)の話を書いたので、旅の中で食べた美味しい肉たちのことを思い出してしまっただけのことです。

 サッカー旅の中で最初に本格的に「肉」と出会ったのは、1978年のアルゼンチン・ワールドカップの時でした。知る人ぞ知る牛肉の国。人口よりも多くの牛がいて、その肉を食べています。あの国が20世紀の前半に栄えた理由の一つは、19世紀の終わりに冷蔵設備の整った船ができたことによって牛肉をヨーロッパに向けて輸出できるようになったことでした。

 アルゼンチン・ワールドカップの時、僕は日本サッカー狂会会員のアントニオ太田さんの家に泊めてもらっていました。アントニオの父の太田一二さんが大のサッカー狂でした。一二さんは戦前オランダ領東インドで仕事をしていて、そこでオランダ人女性のマリアさんと結婚。戦後、日本に引き揚げてきた後、パラグアイに渡り、さらにアルゼンチンに移ってサッカーを楽しんでいたのですが、楽しみにしていたワールドカップの直前に亡くなってしまいました。

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