世界大会出場を勝ち取った「もう一つの日本代表」 eスポーツの現在地(3) 中田英寿を彷彿とさせる心の叫びの画像
今回はコーチ役にまわったWeb Nasri。戦術はeスポーツでも重要となる 写真提供:JFA

 日本代表が、世界大会出場を勝ち取った。ワールドカップへの出場ではない。ピッチの上の話でもない。だが、れっきとした日本代表、e日本代表が成し遂げた快挙だ。

 まさに初陣だった。日本サッカー協会(JFA)が初めて選出した「e日本代表」が今年4月、当然JFAの歴史上で初となる公式戦を戦った。国際サッカー連盟(FIFA)が主催する、eスポーツ版のワールドカップとも言える国別対抗戦「FIFAe Nations Cup」の出場権を争うアジア・オセアニア地区予選に臨んだのだ。

 初めて日本代表として戦いに挑んだ選手たちの戦いぶり、そして言動からは、eスポーツの現状が浮かび上がってきた。

■前回の記事「リアルサッカーと変わらない代表戦の重み」は、こちらから■

■ゲームの中のリアルなサッカー

 世界大会出場権を獲得した準決勝の韓国戦は、まさに激闘だった。2勝先取で勝ち抜けとなるノックアウト形式の戦いで、初戦を落としながらも逆転に成功したのだ。

 この準決勝を勝ち抜いたことで、決勝にはリラックスして臨むことができたという。その言葉のとおり、インドネシアには2-1、3-1であっさりと勝利。初めて日本代表として臨んだ予選で、アジア・オセアニア地区の王者に輝いた。

 そう考えると、やはり大きな意味を持ったのが準決勝の日韓戦だった。

 その緊張の対決で、勝ち上がりを決める2勝目を挙げたのがAguだった。また、一気に背水のピンチに陥る初戦負けを喫したのも、Aguだった。わずかな時間の間に、ジェットコースターに乗って地獄から天国へ駆け上がったかのようだった。

 初戦では2度リードしながらも、最終的には延長戦の末、PK戦で敗れた。それから30分も経たずして始まる第3戦までの間に、Aguはしっかりと頭の中も切り替えていた。

「4-3-3の攻撃的なフォーメーションを普段は使っているんですけど、(韓国との自身の)2試合目に関しては4-1-2-1-2という中盤の枚数を増やして、なおかつ2トップというさらに攻撃的なフォーメーションで挑みました」

 この変更は、もともと準備していた「プランB」だったという。

「(フォーメーションの変更は)もともと用意はしていたのですが、1戦目でPK戦にもつれるくらいの勝負ができていたので、1試合目はがっつりとは変えずにやっていました。でも負けてしまった以上は後がないので、2試合目は初っ端からある程度考えていたプランで『これでやるぞ』とやりました」

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