圧勝したパラグアイ、パナマ戦の2試合を分析すると、東京オリンピックに向かう女子代表の全貌が見えてきた。そして、そこには、「WEリーグ」発足前夜の日本女子サッカーの新しいトレンドに呼応する変化があった。再び世界で戴冠するために、“なでしこジャパン”が見据える未来とは――。
■「WEリーグ」発足に向けての変化
また、2020年に2部から昇格したばかりで旋風を起こしたのがセレッソ大阪レディース堺だった。20歳前後の若い選手ばかりのチームだったが、これまでの女子サッカーにはない大きな展開が武器のチームだった。
つまり、ピッチの幅を1本のパスでサイドを変えるとか、サイドのスペースを利用して大きく長いスルーパスを通すことができたのだ。これも、これまでの女子サッカーにはないサイズ感のあるサッカーだった。今回の代表に招集された北村菜々美(現所属はベレーザ)や林穂之香(同じくAIKフットボール=スウェーデン)も、昨年まではC大阪で活躍した選手だ。
つまり、日本の女子サッカー全体が、今、少しずつ変わりつつあるのだ。
また、INAC神戸レオネッサのゲルト・エンゲルスやノジマステラ神奈川相模原の北野誠といった、男子のJリーグでトップチームの監督を経験した指導者も加わってきている。
これまでの女子サッカーは、「自分たちの良さを発揮すること」が大事だった。だが、そうした男子のトップクラスを率いた経験のある指導者は、“Jリーグ的な”相手の良さを消すための試合運びも求めるようになっている。
2020年シーズンには、北野監督が率いるノジマステラ神奈川相模原は、上位相手にはしっかりと相手の良さを消してリアクションサッカーで強豪を苦しめることに成功した(ただし、下位チーム相手に、自分たちがボールを支配する展開になると逆に苦しんだのだが)。
つまり、最近の日本の女子サッカーには、フィジカル的な「強さ」を求めたり、相手の良さを消して勝負する“男子的な”要素も加わってきているのである。
そして、これまでテクニックによるサッカーを追及して、数多くの代表級の選手を輩出し、日本の女子サッカーをけん引してきたベレーザ自身も、「代表で世界のトップに立つため」という意識を高く持ってパススピードを追求するようになってきている。
今シーズンには、初めての女子のプロリーグ「WEリーグ」も発足する。プロともなれば、こうした傾向には一層拍車がかかることだろう。