■チームの「志」が生んだ大勝
勝点3をつかむのは、誰にとっても驚きではなかった。
しかし、ここまでの大差を予想することはできなかった。
3月30日、フクダ電子アリーナで行なわれたカタールW杯アジア2次予選のモンゴル戦で、日本は14対0というド派手なゴールラッシュを演じた。大迫勇也がハットトリックを達成し、彼を含めた8人が得点者に名を連ねた。
モンゴル国内の新型コロナウイルスの感染状況により、千葉県を舞台としながらモンゴルのホームゲームとして行なわれた一戦で、日本が見せつけたのは「基準の違い」である。
モンゴル戦を控えた森保一監督は、「自分たちがもっと強くなる、うまくなる、高い目標に向かっていくんだという高い志を持ってプレーすることが大事だと思いますし、その志をもう一度確認したい」と話していた。表現方法を変えれば、W杯ベスト8入りを狙うにふさわしいインターナショナルの基準でプレーしていこう、ということである。
普通にプレーすればゴールをこじ開けられるという力関係のゲームでは、思い切りの良さと荒っぽさが混同されがちだ。ここで点を取ってやろうといった気持ちが膨らみ、強引なシュートが増えたりする。そうなると、プレーが大味になってしまう。点差が開いていっても、プレーしている選手も観ている側もどこかスッキリしない、という展開になる。
日本とモンゴルの間には、はっきりとした力の差がある。それでも、日本は強引にゴールを狙っていくのではなく、丁寧に、丹念に、それでいて執拗にプレーした。ラストパスとシュートの精度にこだわっていた。モンゴルと戦いながらも、より高い基準を意識していたからだろう。
前半が5対0に終われば、後半はペースダウンしてもおかしくない。2019年10月のモンゴル戦は、前半のうちに4点を奪ったものの、後半は2点にとどまった。格下相手の試合で最後までペースを落とさないのは、実は簡単ではないのである。体力のロスとケガを避けるためにも、ほどよいところに着地させるチームは少なくない。
前半で勝負は決まっていたが、日本は後半もどん欲にゴールを狙っていった。90+1分、90+2分、90+3分の3連弾は、この試合に挑むチームの精神性を表わしていた。インターナショナルな基準を掲げているチームは、ペースダウンを拒絶したのだ。