キリアン・ムバッペとアーリング・ハーランドが、リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドのように時代を築いていく可能性は十分にある。
まずは彼らが「出現」した背景を探りたい。ムバッペとハーランドはいずれもアスリート能力の高い選手だ。正確な技術はさることながら、フィジカルで相手に優る特徴を備えている。それは物理的なスピードでDFを凌駕してゴールを陥れるというのを可能にしている。
これはある種の「カウンター」であった。2000年代後半から2010年代にかけて、欧州と世界を席巻したのはバルセロナとスペイン代表だった。ポゼッションは正義と化して、「チキ・タカ」と称されるフットボールは一世を風靡した。その中で出てきたのがメッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、ダニ・アウベス、フィリップ・ラーム、ルカ・モドリッチ、マルセロ、ダビド・シルバといった選手たちだ。彼らは小柄で技術があるプレーヤーである。
サイズは小さいが、ピッチ上では巨人の如く振る舞う。「美しく勝利せよ」というヨハン・クライフの言葉通り、ジョゼップ・グアルディオラ監督率いるバルセロナ(ペップ・チーム)はビッグクラブを次々に撃破していった。また、それはスペイン代表に色濃く反映された。2010年の南アフリカ・ワールドカップでスペイン代表が優勝した際、レギュラーの7名はバルセロナの選手だった。
■戦術とフィジカル
「監督の役割は非常に大事になった。時に、過剰なくらいにね。こんにち、ドリブルで相手を抜き去るのは簡単ではない。全体のフィジカルベースが高まったからだ。胸にチップをつけて、スピードを測定して、走行距離を記録する...。フィジカル面でいえば、かつてないほどに準備ができている状態だ」とは現在アル・サッドで指揮を執るシャビの言葉だ。
「戦術面でも天井を叩いたように思う。グアルディオラの影響は大きかった。彼はすべてをコントロールしようとする。例えば、バルサでは、スローインの守備のトレーニングをしていた。そうすると、試合では相手は何もできなくなる。そして最終的に誰もがグアルディオラをコピーするようになった」
「戦術とフィジカルは限界に達している。では、何が残るのか。それはテクニカルな側面であり、タレントだ」