■決勝点の「土台」
名古屋は手堅かった。その言葉は、攻撃についてもあてはまる。変化に乏しいのだ。
フィッカデンティ監督がついに動いたのは、54分のことだった。新加入の柿谷と長澤和輝を含む3人を同時投入したのだ。前田を右サイドハーフからトップに移し、トップ下に配置された柿谷は意表を突いた縦パスを送るなど、変化の兆しを感じさせた。長澤が入った中盤の底は、安定感を変わらず保つ。オフの補強がチームに合ったものであることを感じさせた。
名古屋の前線は、加速した。75分、ゴール左から相馬が入れたパスは、距離が近い割りには強すぎるかに思われた。応えたのは、右サイドから思い切り絞ってきていたマテウスのアイディアと技術だ。ジャンプしながら柔らかくヒールで落として、前田のシュートを導いた。選手が狭いエリアに集まりつつも落ちないプレースピードは、前線のタレントたちの能力の高さを証明していた。
そして決勝点の場面である。交代出場していた宮原和也が右サイドを駆け上がり、前田へとつないだ。前田が顔を上げた瞬間に反応し、ヒールで流した相馬の動きは見事だった。だが、実は前田の視線がとらえていたのは、ゴール前に走り込んでいた柿谷ではなかったか。独特のリズムと意外性を武器とする柿谷は、確かに危険性を放っていたのだ。
そもそもゴールの場面は、人に強い札幌の守備陣に対して、マテウスがうまくキム・ミンテをサイドに引き出すプレーから始まった。また、このゴールが決勝点となったのも、それまでビッグセーブを数度見せていたランゲラックがいればこそ、だった。大事なリードを保つべく、新加入の木本恭生を入れて「ふた」を厚くする。昨季から抱えるタレントたち、そして投入された新戦力と、名古屋が高い「地力」を有していることが、この試合では証明された。
問題は、この戦力をいかに扱うか、である。クラブの補強は「ウノ・ゼロ」の、さらにリーグ3位という昨季の成績の先を求めてのことである。言い換えれば、チームに突きつけられた「課題」でもある。
フィッカデンティ監督が提示する答えは、いかに。
■試合結果
名古屋グランパス 1―0 北海道コンサドーレ札幌
■得点
82分 相馬勇紀(名古屋グランパス)