■シューズの色は個性の表現
ある時期、柏レイソルのある選手が真っ黄色なシューズをはいていたことがある。その黄色が、ユニホームの黄色とまったく同じ色だったので、その選手はまるでシューズを履き忘れて、ソックスのまま試合に出てきたかのように見え、なんともおかしかった。軽々とした印象もあったが、ときどき「踏まれたら危ない」と思ってしまったものだった。
イングランドのアーセナルなどで活躍したデンマーク人ストライカーのニクラス・ベントナーは、一時期、ピンク色のシューズがトレードマークだった。シューズの色で選手の性格や「願望」を推し量るという研究があり、「ピンク色は……」などと決め付けられるなか、彼はこんなことを語った。
「同じサッカー選手といっても、みんな同じじゃない。僕らはそれぞれ違うんだ」
さすが北欧デンマーク人。「多様性」が重要な価値観となった今日の世界の「先駆け」のような発言だった。
私の友人は、「チームゲームなのに、なぜ同じデザインのシューズをはかないのか」と、半ば怒りの発言をするのだが、「サッカーの常識」にどっぷりとつかりきっている私は、どんな色のシューズをはいていようと、あまり気にならない。
それどころか、選手を見分けるのにとても便利にしている。歳とともに視力が衰えたためか、なかなか体型や背番号で選手を見分けるのが難しくなっている。そういうときには、試合のはじめにそれぞれの選手のシューズの色をチェックしておき、赤は誰、白は誰などとメモをしておくと、割と見分けやすい。そういった自己中心的な理由で、シューズの「カラー多様化」に、私は好意的なのである。