強いて言えば、47分に敵のFWイラス・べブにかわされて同点に持ち込まれたが、その場面ではCBマルティン・ヒンターレッガーもこのトーゴ代表FWを止めることができていないので、ここは長谷部の問題ではなくべブを讃えるべきだろう。

 攻撃時には、最終ラインに入ってビルドアップを試ることがあれば、中盤では時折ダイレクトを織り交ぜながらシンプルなパスを選択。プレーの決定に迷いはない。球離れが速く、的確に横パスと縦パスを使い分けるところに、ベテランの風味が漂う。

 長谷部は73分に交代となったが、リベロとしてだけでなくボランチとしても、依然としてブンデスリーガで戦えることを証明している。何より昨年12月のボルシアMG戦でこのベテランの日本人選手が先発に復帰してから、フランクフルトは負けていないのだ。もちろんFWアンドレ・シウバがコンスタントにゴールを重ねていることなど、他にも好調の要因を見つけることはできるだろう。

 しかし1月、それまで主将を務めていたCBダヴィド・アブラハムが、コロナ禍において母国の家族のために引退したことで、これまで以上にチームの“屋台骨”として37歳の日本人選手の存在は重要になってくるに違いない。アブラハムが引退して以来、試合では長谷部がキャプテンマークを巻いている。

 ホッフェンハイムに3-1で逆転勝ちを収めた後で、ベテランのボランチは次のようなコメントを残している。

「今日も勝ち点3を取れたことが良かったと思います。試合を通して、1-1にされてからも落ち着いて自分たちのゲームをして勝ち切れたことからは、チームの成長を、この1、2か月感じます。チームは本当に調子がいいので、とにかくこれを続けていきたいことと、個人的にはチームの勝利が何より重要なので、自分のプレーが勝利に繋がるように、引き続きやっていきたいなと思います」

 長谷部は「チームの勝利が何より重要」だと言う。その献身的なメンタリティが、これからもフランクフルトの進撃を支えていくに違いない。

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