久保建英「ヘタフェ移籍」は成功か、失敗か(3)「レアルが久保に期待すること」の画像
久保建英(ヘタフェ) 写真:Pressinphoto/アフロ

※第2回はこちらより

彷徨える久保の居場所はどこに? ビジャレアルからヘタフェに移籍して、途中出場だった初戦こそチームの2ゴールに絡んだものの、その後は3試合に先発するも、持ち味を発揮できていない。この移籍は成功だったのか、それとも失敗だったのか。——それを考えるには、まず、この移籍がなんのために行われたのかというところから始めよう。

■ビジャレアル離脱は当然だった

 そもそも、久保建英は“こんなプレー・スタイル”のヘタフェに移籍する必要はあったのだろうか?

 実際、「ビジャレアルで辛抱強く戦い、レギュラーポジションを勝ち取ってこそ、成長できたのではないか」と考える向きもあると聞く。

 だが、僕はヘタフェという選択が最良だったかどうかは別として、出場機会が与えられないのであれば、ビジャレアルから離れるのは当然の選択だったと思う。

 まず、久保が現在、何を目指しているかということを確認する必要がある。

 久保は、レアル・マドリードに所属しており、経験を積むためにレンタル移籍に出されているのだ。目標は、あくまでも戦力として認められてレアル・マドリードのトップチームの一員として登録されることだ。

 日本国籍の久保は、「EU枠外」という制約があるので、トップ登録には困難が伴うが、その枠が空いた時にいつでも所属元であるレアルに呼び戻されるように力を蓄えておかなければいけないのだ。

 経験を積ませるのには、リザーブチームである「レアル・マドリード・カスティージャ」に所属させて「セグンダ・ディビシオンB」(3部相当)で使うこともできたはずだが、レアルはそうではなく、久保をレンタルに出すことを決めた。これは、久保には3部リーグではなく1部リーグである「プリメーラ・ディビシオン」を経験させたかったからである。

 久保はそれだけ「即戦力」に近いと判断されたわけだ。

 久保としては、レアルのその期待に応えなければいけない。つまり、プリメーラの試合に出続けることだ。

 もし、久保がビジャレアル所属の選手だったとすれば、半年や1年試合に出られなくても、そこでトレーニングに励んでウナイ・エメリ監督の信頼を得るまで辛抱すべきだったろう。あるいは、もしレアルのトップチームに登録された上で出場機会が与えられなくなったとしたら、(クラブから再びレンタルを提案されるまでは)辛抱するしかない。

 だが、久保はレアルが所有権を持っており、そして、レアルは久保にプリメーラ・ディビシオンを経験させたいと考えているのだ。

 レアル・マドリード首脳部の期待に応えてトップチーム登録を勝ち取るためには、クラブの判断に従ってプリメーラでできるだけ多くの試合に出て、経験を積んで、そして戦力としてレアルに呼び戻されるのを待つしかない。

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