■海外サッカー初観戦は憧れのハイバリーで
日程表をもらった時、僕はすぐに気付きました。
「土曜日にロンドンちゅうことはフットボール・リーグの試合が見られんちゃうか」。当時のフットボール・リーグは、原則すべての試合が土曜日の午後3時キックオフと決まっていたからです。
さて、どんな試合があるのか……? 今だったら、海外リーグの日程なんかスマホさえあれば簡単に調べられます。しかし、当時はどうやって調べたらいいかすらも分かりませんでした。『ワールドサッカー』というイングランドの雑誌は定期購読していましたが、これは「海外サッカー」専門の雑誌ですから、イングランド国内リーグの日程など載っていません。そこで、僕はイングランドのフットボール・アソシエーション(FA=協会)に手紙で問い合わせたのでした。そういう点は、本場の協会というのはしっかりしています。すぐに丁重な文面の返信が来て、日程表のコピーが同封されていました。
アーセナル対マンチェスター・シティ……。好カードが見つかりました。早速、旅行会社に依頼してチケットを手配してもらいました。
アーセナルは1968年に来日していますから馴染みあるチームです。しかも、1971年にはリーグとFAカップの二冠「ダブル・チャンピオン」になっています。今ではリーグ優勝を狙えるのは一握りの金持ちクラブだけですから「ダブル」もさほど珍しいことではありませんが、当時は本当に珍しい出来事でした。1888年創設という長い歴史を誇るフットボール・リーグでも「ダブル」は1971年のアーセナルが4度目という歴史的快挙だったのです。
一方のマンチェスター・シティも1972年には4位。4年前には優勝したことのある強豪で、フランシス・リーやコリン・ベルといったイングランド代表選手もプレーしていました。